未収報酬等に係る源泉所得税の取り扱い | 年をまたぐ場合はどうする?
源泉徴収された税額は、確定申告時、納税額から差し引いて計算します。
では、年内に入金がされていない報酬等に係る源泉所得税はどうなるのでしょうか?
本記事では、未収報酬等に係る源泉所得税の取り扱いについて解説していきます。
報酬等の入金が年をまたぐ場合に迷う理由
未収報酬等の源泉所得税の取り扱いで迷うのは、以下の理由が挙げられます。
- 翌年度に源泉徴収の会計処理をする
- 支払調書に未払分が記載されている
翌年度に源泉徴収の会計処理をする
未収報酬等の源泉所得税は、実際に入金のあった翌年度に会計処理をします。
(前提)
- 当年度12月の報酬等:100,000円
- 源泉徴収税額:10,210円
- 翌年度1月の入金:89,790円
(12月)売上高を計上
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
売掛金 | 100,000 | 売上高 | 100,000 |
(1月)入金処理
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
普通預金 | 89,790 | 売掛金 | 100,000 |
事業主貸 | 10,210 |
支払調書に未払分が記載されている
取引先からの支払調書には、(取引先にとって)未払いの報酬等が内書きされます。
(支払調書)
区分 | 細目 | 支払金額 | 源泉徴収税額 |
報酬 | 内 100,000 | 10,210 | |
1,200,000 | 122,520 |
年をまたぐ源泉所得税の確定申告の取り扱い
翌年度に徴収される源泉所得税は、当年度の確定申告でどのように取り扱うのでしょうか?
結論:当年度の源泉徴収税額として、納税額から控除する
所得税法では、「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」を控除することになっています。
所得税法
(確定所得申告)
第百二十条
四 第一号に掲げる総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額(当該所得税の額のうちに、第百二十七条第一項から第三項まで(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定による申告書を提出したことにより、又は当該申告書に係る所得税につき更正を受けたことにより還付される金額その他政令で定める金額がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この号及び次号において「源泉徴収税額」という。)がある場合には、前号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額
そのため、実際に取引先が源泉徴収したか否かに関わらず、当年度の報酬等に係る源泉所得税は、当年度の確定申告において控除することになります。
(確定申告書の記載)
- 源泉徴収税額(48)122,520円
- 未納付の源泉徴収税額(60)10,210円
なお、所得税が還付になる場合、還付金は未納付分を控除して計算する点に留意が必要です。
まとめ
今回は、未収報酬等に係る源泉所得税の取り扱いについて見てきました。
当年度の報酬等に係る源泉所得税は、入金の有無に関わらず、当年度の確定申告で控除してください。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。