事業所得と雑所得のどちらで確定申告すべきか?
副業収入などがある場合、その収入は、事業所得と雑所得のどちらで確定申告すべきでしょうか?
本記事では、事業所得と雑所得の判断基準を解説していきます。
事業所得と雑所得の関係
事業所得とは、事業から生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く)を言います(所得税法27条)。
一方、雑所得とは、他の所得のいずれにも該当しない所得を言います(所得税法35条)。
例えば、副業収入があった場合で、かつ事業的規模でない場合は、事業所得のほか、その他の所得にも該当しないことから、雑所得となります。
そのため、副業収入などがある場合は、その所得を得るための活動が「事業」にあたるかどうかがポイントになります。
事業とは?
事業所得であるかどうかは、社会通念上、その活動が事業と言えるかどうかで判定します。
例えば、東京地判昭和48年7月18日では、以下のポイントが示されています。
- 営利性、有償性の有無
- 継続性、反復性の有無
- 自己の危険と計算における企画遂行性の有無
- その取引に費やした精神的あるいは肉体的労力の程度
- 人的、物的設備の有無
- その取引の目的
- その者の職歴、社会的地位、生活状況など
要するに、時間やリスクをかけて、継続的に営利を追求しているかが問われています。
事業所得と雑所得の区分
このように、事業所得かどうかの判断は、非常に曖昧な基準で行われてきました。
そこで、2022年10月に所得税基本通達35-2が改正され、一定の基準が明確になりました。
具体的な判断基準
本改正では、収入金額と記帳・帳簿書類の保存の有無が判断基準となっています。
(事業所得と業務に係る雑所得等の区分)
収入金額 | 記帳・帳簿書類の保存あり | 記帳・帳簿書類の保存なし |
300万円超 | 概ね事業所得 | 概ね業務に係る雑所得 |
300万円以下 | 概ね事業所得(注1) | 業務に係る雑所得(注2) |
(注1)以下の場合、個別に判断が必要となります。
- その所得の収入金額が僅少と認められる場合
- その所得を得る活動に営利性が認められない場合
収入金額が僅少とは、例年(概ね3年程度)300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合を言います。
また、活動に営利性が認められないとは、その所得が例年赤字で、かつ赤字を解消する取組を実施していない場合を言います。
(注2)資産の譲渡は譲渡所得、その他雑所得になります。
判断のポイント
収入金額が300万円超の場合、記帳・帳簿書類の保存があれば、事業所得となります。
一方、収入金額が300万円以下の場合は、記帳・帳簿書類を保存していたとしても、一概に事業所得とは言えません。
この場合、収入金額が僅少でなく、営利を追求していることがポイントになります。
事業所得と雑所得の違い
事業所得と雑所得を適切に区分する必要があるのは、主に以下2つの違いがあるためです。
- 事業所得は、青色申告ができる
- 事業所得は、他の所得と損益通算ができる
事業所得は、青色申告ができる
事業所得は、青色申告の対象となります。
青色申告にすると、以下の特典があります。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 純損失の繰越しと繰戻し
- その他
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
事業所得は、他の所得と損益通算ができる
事業所得は、他の所得と損益通算ができます。
(前提)
- 事業所得:▲120万円
- 給与所得:600万円
(計算)
- 合計所得:600万円-120万円=480万円
まとめ
今回は、事業所得と雑所得の判断基準を見てきました。
所得税基本通達の改正により、一定の基準が明確になりました。
収入金額と記帳・帳簿書類の保存の有無をベースにして判断しましょう。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
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