控除対象外消費税額等とは?
本記事では、控除対象外消費税額等について解説していきます。
この記事を書いた人

髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。
控除対象外消費税額等とは?
課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満である場合、仕入控除税額は、課税売上割合に対応する部分の金額となります。
このとき、税抜経理方式を採用していると、仕入税額控除ができない仮払消費税等の額が生じます。
この仕入税額控除ができない仮払消費税等の額を「控除対象外消費税額等」と言います。
【対象者】
- 税抜経理方式を採用している、下記のいずれかに該当する事業者
- 課税売上高が5億円超
- 課税売上割合が95%未満
なお、税込経理方式を採用している場合は、消費税を資産や経費に含めて処理するため、特別な調整は不要となります。
控除対象外消費税額等の処理
控除対象外消費税額等は、資産に係るものかどうかで、処理の方法が変わります。
- 資産に係るもの
- 資産以外に係るもの
資産に係るもの
資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法によって処理します(法令139の4)。
【資産に係る控除対象外消費税額等】
- 資産の取得価額に算入する
- 以下の要件に該当する場合で、損金の額に算入する
- 課税売上割合が80%以上である
- 棚卸資産に係るものである
- 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満である
- 「繰延消費税額等」として資産計上する
繰延消費税額等
繰延消費税額等として資産計上した場合、以下の金額を損金の額に算入します。
【繰延消費税額等】
- 取得年度
- 損金の額 = 繰延消費税額等 ×(事業年度の月数 / 60月)×(1 / 2)
- 翌年度以降
- 損金の額 = 繰延消費税額等 ×(事業年度の月数 / 60月)
要するに、5年で損金の額に算入することになります。
税込経理方式の場合、消費税は、資産の取得価額に含まれ、減価償却を通じて、損金の額に算入されます。
そのため、税抜経理方式においても、簡便的に5年と定めて償却することで、税込経理方式とのバランスを取っています。
具体例
【前提】
- 固定資産を購入:5,000万円
- 仮払消費税等の額:500万円
- 課税売上割合:60%
- 一括比例配分方式
【計算】
- 繰延消費税額等:500万円 ×(1 ー 60%)= 200万円
- 損金の額:200万円 ×(12 / 60)×(1 / 2)= 20万円
資産以外に係るもの
資産以外に係る控除対象外消費税額等は、全額を損金の額に算入します。
ただし、交際費等に係るものは、交際費等の額に加算して、損金不算入額を計算します。
交際費等に係るもの
交際費等に係る控除対象外消費税額等は、以下の方法で算定します。
【交際費等に係る控除対象外消費税額等】
- 個別対応方式
- 控除対象外消費税額等 = 共通対応の交際費等に係る消費税額 ×(1- 課税売上割合)
- 一括比例配分方式
- 控除対象外消費税額等 = 交際費等に係る消費税額 ×(1- 課税売上割合)
交際費等に係る控除対象外消費税額等は、消費税の計算後、損金経理されます(租税公課など)。
その後、別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)において、科目欄に「交際費等の額に係る控除対象外消費税額等」として記載することになります。
まとめ
今回は、控除対象外消費税額等について見てきました。
特に、資産や交際費等に係るものは、処理が曖昧になりがちなので、注意が必要です。

