簡易課税とは?計算方法や注意点を詳しく解説
本記事では、簡易課税について、計算方法や注意点を詳しく解説していきます。
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簡易課税とは?
消費税の計算方法には、一般課税と簡易課税の2種類があります。
- 一般課税
- 簡易課税
このうち、簡易課税は、中小企業者等の事務負担の軽減を目的として、仕入控除税額を簡易的に算出できる制度となっています。
簡易課税の要件
簡易課税を適用するには、以下2つの要件が必要です。
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下である
- 「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している
基準期間の課税売上高が5,000万円以下である
簡易課税は、中小企業者等の事務負担の軽減を目的としています。
そのため、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られます。
なお、基準期間は、以下の通りです。
- 個人事業者:前々年
- 法人:前々事業年度
「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している
簡易課税は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで適用されます。
この届出書は、適用する課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。
ただし、新規開業等の場合は、開業等した課税期間の末日が提出期限となります。
なお、課税事業者を選択した事業者が調整対象固定資産の仕入等を行った場合などは、この届出書を提出することができない期間があります。
簡易課税の計算
ここでは、簡易課税の計算方法と計算例を見ていきます。
簡易課税の計算方法
簡易課税では、売上高等に係る消費税額にみなし仕入率を乗じて、仕入控除税額を計算します。
仕入控除税額=(課税標準額に対する消費税額ー売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額)× みなし仕入率
また、みなし仕入率は、事業区分によって異なります。
事業区分 | 該当する事業 | みなし仕入率 |
---|---|---|
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る) | 80% |
第3種事業 | 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業 | 70% |
第4種事業 | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業 | 60% |
第5種事業 | 運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く) | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
簡易課税の計算例
以下、単一事業の場合と複数事業の場合に分けて見ていきます。
単一事業の場合
単一事業の場合は、該当する事業のみなし仕入率を乗じて、仕入控除税額を計算します。
(前提)
- 事業区分:第2種事業
- 課税標準に対する消費税額:100万円
(計算)
- 仕入控除税額:100万円×80%=80万円
- 消費税納税額:100万円-80万円=20万円
複数事業の場合
複数事業を営業している場合は、原則と特例の2つの計算方法があります。
また、事業区分をしていない場合の取扱いもあります。
原則
原則として、各事業のみなし仕入率を使用し、事業全体の仕入控除税額を計算します(原則法)。
また、一定の条件下において、各事業の消費税額にみなし仕入率を乗じて計算する簡便的な方法もあります(簡便法)。
(前提)
- 事業区分:第2種事業
- 課税標準に対する消費税額:100万円
- 事業区分:第4種事業
- 課税標準に対する消費税額:200万円
(計算)
- 消費税額:100万円+200万円=300万円
- 仕入控除税額:300万円×(100万円×80%+200万円×60% / 300万円)=200万円
- 消費税納税額:300万円-200万円=100万円
特例
特例には、以下の2パターンがあります。
- 2種類以上の事業を営業し、かつ1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占める場合、その事業のみなし仕入率を全体に適用することができます
- 3種類以上の事業を営業し、かつ特定の2種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占める場合、その2種類のうち、みなし仕入率が高い事業は、その事業のみなし仕入率を使用し、その他の事業については、みなし仕入率が低い事業のみなし仕入率を適用することができます
(前提)
- 事業区分:第2種事業
- 課税標準に対する消費税額:800万円
- 事業区分:第4種事業
- 課税標準に対する消費税額:200万円
(計算)
- 消費税額:800万円+200万円=1,000万円
- 仕入控除税額:1,000万円×80%=800万円
- 消費税納税額:1,000万円-800万円=200万円
事業区分をしていない場合
2種類以上の事業を営業し、かつ課税売上げを事業ごとに区分していない場合は、その区分していない事業のうち、一番低いみなし仕入率を適用して、仕入控除税額を計算します。
簡易課税の注意点
簡易課税には、以下の注意点があります。
- 開始から2年間は適用する必要がある
- 複数事業の場合、事業区分が煩雑である
開始から2年間は適用する必要がある
簡易課税は、適用が開始される課税期間から2年が経過しなければ、一般課税にすることができません。
そのため、少なくとも、適用開始から2年間の予算等をベースに、シミュレーションする必要があります。
なお、一般課税にする場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することになります。
複数事業の場合、事業区分が煩雑である
簡易課税の目的は、事務負担の軽減です。
しかし、複数事業の場合、事業の区分が事務負担の増加につながります。
また、事業を区分していない場合、その区分していない事業のうち、一番低いみなし仕入率を適用して、仕入控除税額を計算します。
その結果、納税額が必要以上に高くなります。
まとめ
今回は、簡易課税について、計算方法や注意点を詳しく見てきました。
複数事業を営業している場合、経理事務や消費税の計算が複雑になります。
そのため、自社の状況を鑑みて、慎重に課税方法を選択しましょう。
この記事を書いた人
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髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。