個人事業主の廃業後の経費は確定申告できる?
個人事業主が廃業した場合、廃業後に発生した経費は確定申告できるのでしょうか?
本記事では、個人事業主の廃業後の経費について解説していきます。
事業を廃止した場合の経費はどうなる?
必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額です。
そのため、事業を廃止した場合は、廃業日までに債務の確定した金額となるのが原則です。
しかし、例外として「事業を廃止した場合の必要経費の特例」があります。
この特例により、廃業後に発生した費用を必要経費として計上することができます。
所得税法
(事業を廃止した場合の必要経費の特例)
第六十三条 居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その者のその廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得に係る総収入金額がなかつた場合には、当該総収入金額があつた最近の年分)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
事業を廃止した場合の必要経費の特例
ここでは、事業を廃止した場合の必要経費の特例について、以下の項目を見ていきます。
- 対象者
- 対象となる費用
- 必要経費とする年分
- 注意点(減価償却)
対象者
対象となるのは、以下の所得がある方です。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
そのため、副業などで雑所得がある方は、対象外となります。
対象となる費用
対象となる費用は、以下の条件を満たした費用です。
- 当該事業に係る費用又は損失
- 当該事業を廃止しなかったとしたならば、必要経費に算入されるべき金額
当該事業に係る費用又は損失
要するに、必要経費であることが条件となっています。
必要経費に算入できる金額は、以下の通りです。
- 総収入金額に対応する売上原価、その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費および一般管理費、その他業務上の費用の額
当該事業を廃止しなかったとしたならば、必要経費に算入されるべき金額
要するに、事業を継続していれば、必要経費として計上できた費用が対象となります。
必要経費とする年分
廃業後の費用を計上する場合、まずは、廃業した年分の経費として計上します。
そして、廃業した年分で控除しきれない場合は、その前年分の経費として計上できます。
なお、確定申告後に必要経費を計上するには、更生の請求が必要となります。
更生の請求は、当該事実が生じた日の翌日から2ヶ月以内に手続きが必要です(所得税法152条)。
注意点(減価償却)
固定資産等の減価償却費は、特例に関わらず、廃業日までの分を計上します。
例えば、廃業日が9月30日の場合、1月1日~9月30日までの分を計上します。
では、未償却残高はどうなるのでしょうか?
これは、当該資産の処分方法によって、取り扱いが異なります。
処分方法 | 取り扱い |
廃棄 | 固定資産除却損として損失を計上する |
売却 | 譲渡所得として確定申告する |
使用 | 処理は不要 |
使用とは、固定資産等をそのままプライベートで使用することです。
例えば、業務用の自動車をプライベート用として使用する場合が該当します。
まとめ
今回は、事業を廃止した場合の必要経費の特例について見てきました。
この特例を使えば、廃業後の費用も必要経費として計上できます。
ポイントは、対象となる費用の選別になるでしょう。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
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