損益分岐点の活用方法と注意点 | 計算方法も解説
損益分岐点は知っているけれど、うまく経営に活用できていない。
そのような経営者の方が多いのではないでしょうか?
本記事では、損益分岐点の計算方法や活用方法、活用するにあたっての注意点などを解説していきます。
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損益分岐点とは?
損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなる(損益がゼロとなる)売上高です。
下表の場合、「1,000」が損益分岐点となります。
項目 | 金額 |
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 600 |
売上総利益 | 400 |
販売費及び一般管理費 | 400 |
営業利益 | 0 |
損益分岐点の計算方法
損益分岐点は、損益計算書から算出することはできません。
損益分岐点を計算するには、費用を固定費と変動費に分けて、限界利益を計算する必要があります。
固定費と変動費
固定費とは、売上高(販売数量)がゼロであっても発生する費用です。
例えば、人件費や建物の賃料などが該当します。
一方、変動費とは、売上高(販売数量)に比例して発生する費用です。
例えば、材料費や外注費などが該当します。
限界利益
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた金額です。
つまり、売上高(販売数量)に比例して増加する利益です。
また、売上高に対する限界利益の比率を「限界利益率」と言います。
損益分岐点の計算
損益計算書の組み替え
固定費と変動費が分かれば、損益計算書を以下のように組み替えます。
(比率は、売上高に対する比率です)
項目 | 金額 | 比率 |
売上高 | 1,000 | 100% |
変動費 | 400 | 40% |
限界利益 | 600 | 60% |
固定費 | 500 | 50% |
営業利益 | 100 | 10% |
損益分岐点売上高
損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなる(損益がゼロとなる)売上高のことでした。
つまり、売上高に比例して増加する限界利益が固定費と同額になる売上高と言えます。
これを計算式で表すと、下記となります。
- 損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
実際に計算すると、500/60%=833、となります。
項目 | 金額 |
売上高 | 833 |
変動費 | 333 |
限界利益 | 500 |
固定費 | 500 |
営業利益 | 0 |
損益分岐点の活用方法
損益分岐点の主な活用方法は、以下の2つです。
- 利益計画の達成に必要な売上高を把握する
- 事業のリスクを把握する
利益計画の達成に必要な売上高を把握する
例えば、以下のような事業があったとします。
- 限界利益率:60%
- 固定費:1,500
- 目標利益:200
では、この事業が目標利益を達成するのに必要な売上高はいくらでしょうか?
答えは、限界利益が固定費および目標利益の合計と同額になる売上高です。
- 目標利益に必要な売上高=(固定費+目標利益)/限界利益率
実際に計算すると、(1,500+200)/60%=2,833、となります。
項目 | 金額 |
売上高 | 2,833 |
変動費 | 1,133 |
限界利益 | 1700 |
固定費 | 1500 |
営業利益 | 200 |
事業のリスクを把握する
現在の売上高が損益分岐点をどのくらい上回っているかを示す指標として「安全余裕率」があります。
- 安全余裕率=(売上高-損益分岐点)/売上高
下表の場合、安全余裕率は16.7%となります。
- 損益分岐点:1,500/60%=2,500
- 安全余裕率:(3,000-2,500)/3,000=16.7%
項目 | 金額 | 比率 |
売上高 | 3,000 | 100% |
変動費 | 1,200 | 40% |
限界利益 | 1,800 | 60% |
固定費 | 1,500 | 50% |
営業利益 | 300 | 10% |
安全余裕率には、目安があります。
安全余裕率 | 目安 |
20%以上 | 安全 |
10%~20%未満 | 比較的安全 |
0%~10%未満 | 要注意 |
0%未満 | 危険 |
ただし、業種などによって安全余裕率の目安は異なります。
そのため、業種の平均値と比較したり、時系列で比較するなどの工夫が必要です。
損益分岐点分析の注意点
損益分岐点分析をする場合、以下2点に注意が必要です。
- 損益分岐点は、現実と乖離する
- 固定費と変動費の分解は、不明確である
損益分岐点は、現実と乖離する
損益分岐点は、計算をシンプルにするため、以下の前提条件が用いられています。
- 生産量と販売量は等しい
- 販売単価は一定である
- 固定費は一定である
- 変動費単価は一定である
- 製品構成は一定である(複数製品の場合)
現実として、これらの前提条件は成立しないことがほとんどです。
そのため、現実との乖離が許容できる範囲であることを確認する必要があります。
固定費と変動費の分解は、不明確である
一般的に、固定費と変動費の分解には、勘定科目法が採用されます。
勘定科目法とは、勘定科目ごとに固定費と変動費を分解する方法です。
この方法は、経験をベースに分解するため、不明確になります。
まとめ
今回は、損益分岐点の計算方法や活用方法、活用するにあたっての注意点などを見てきました。
損益分岐点は、うまく活用できれば、経営計画や予算管理に有効な分析となります。
活用するにあっての注意点などを考慮して、意思決定の参考にしてみてください。
この記事を書いた人
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髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。