敷金・礼金の会計処理はどうする?

本記事では、敷金および礼金の会計処理について解説していきます。

この記事を書いた人

髙谷 武司

同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。

会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。

敷金

敷金は、退去時に返還される部分とされない部分で、会計処理が異なります。

【敷金の会計処理】

  • 返還される部分:差入保証金(または敷金)
  • 返還されない部分
    • 20万円以上:長期前払費用
    • 20万円未満:経費(地代家賃など)

返還される部分

敷金のうち、返還される部分は、差入保証金(または敷金)として計上します。
これは、後に返還されることから、資産として計上します。

返還されない部分

敷金のうち、返還されない部分は、20万円以上かどうかで、会計処理が異なります。

20万円以上の場合

返還されない部分が20万円以上の場合、長期前払費用として計上します。
これは、いわゆる税法上の繰延資産に該当します。

法人税法基本通達
(資産を賃借するための権利金等)
8-1-5 次のような費用は、令第14条第1項第6号ロ《資産を賃借するための権利金等》に規定する繰延資産に該当する。(昭55年直法2-8「二十八」、平19年課法2-3「十八」、平19年課法2-17「十六」により改正)

(1) 建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用

(2) 電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用

(注) 建物の賃借に際して支払った仲介手数料の額は、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

敷金は、その支出の効果が将来に及ぶため、一時の経費ではなく、資産に計上したうえで、償却していきます。

償却期間は、5年もしくは賃借期間のいずれかとなります(法基通8-2-3)。

【敷金の償却期間】

  • 原則:5年
  • 例外:賃借期間(※)

(※)賃借期間が5年未満であり、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかである場合に限る

20万円未満の場合

返還されない部分が20万円未満の場合、経費(地代家賃など)として計上します。
これは、金額的に重要でないことから、簡便的な処理として認められています。

礼金

礼金は、敷金とは異なり、返還されません。
そのため、敷金のうち返還されない部分と同様の会計処理となります。

【礼金の会計処理】

  • 20万円以上:長期前払費用
  • 20万円未満:経費(地代家賃など)

また、長期前払費用に計上した場合の償却期間も、敷金と同様です。

その他の費用

賃借に係るその他の費用についても、敷金と同様に考えます。
例えば、更新料や保証会社に支払う保証料も、税法上の繰延資産に該当します。

ただし、仲介手数料は、一時の経費(支払手数料など)として計上できます(法基通8-1-5)。
仲介手数料は上限が定められており、金額的に重要でないことから、簡便的な処理として認められています。

消費税区分

敷金・礼金の消費税区分は、以下の通りです。

【敷金・礼金の消費税区分】

  • 事業用
    • 返還される部分:非課税
    • 返還されない部分:課税
  • 居住用:非課税

事業用の場合は、返還の有無によって消費税区分が変わります。

消費税法基本通達
(借家保証金、権利金等)
5-4-3 建物又は土地等の賃貸借契約等の締結又は更改に当たって受ける保証金、権利金、敷金又は更改料(更新料を含む。)のうち賃貸借期間の経過その他当該賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなるものは、権利の設定の対価であるから資産の譲渡等の対価に該当するが、当該賃貸借契約の終了等に伴って返還することとされているものは、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。

要するに、資産の譲渡等の対価に該当するか否かで判断することになります。

具体例

物件の契約にあたり、以下を支出した。

  • 敷金:300,000円(内、敷引:100,000円)
  • 礼金:240,000円
  • 仲介手数料:10,000円

【敷金】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
差入保証金200,000現金300,000
地代家賃100,000

【礼金】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
長期前払費用240,000現金240,000

【仲介手数料】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料10,000現金10,000

まとめ

今回は、敷金および礼金の会計処理について見てきました。
総じて、契約内容を会計処理に反映させることが大事になります。