中小企業の決算に必要な書類は?

本記事では、中小企業の決算に必要な書類について解説していきます。

この記事を書いた人

髙谷 武司

同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。

会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。

税務申告と株主総会

中小企業の決算において必要な書類は、税務申告と株主総会に区分できます。

【必要な書類の区分】

  • 税務申告に必要な書類
  • 株主総会に必要な書類

税務申告に必要な書類

税務申告には、確定申告書のほか、貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付する必要があります(法人税法第74条)。

添付書類の詳細は、法人税法施行規則第35条に規定されています。

【添付書類】

  1. 貸借対照表及び損益計算書
  2. 株主資本等変動計算書
  3. 勘定科目内訳明細書
  4. 通算法人に関する書類
  5. 事業等の概況に関する書類
  6. 組織再編成に関する契約書等
  7. 組織再編成に関する明細書

ほとんどの中小企業は、4つの書類(1、2、3、5)が対象となるでしょう。

なお、計算書類や個別注記表などは必要ありません。

株主総会に必要な書類

以下、株主総会に必要な書類を解説していきます。

必要な書類

株主総会に必要な書類は、会社法435条および会社計算規則59条に規定されています。

【必要な書類】

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. 株主資本等変動計算書
  4. 個別注記表
  5. 事業報告
  6. 附属明細書

基本的には、中小企業であってもすべての書類を作成する必要があります。
しかし、実務上は、事業報告や付属明細書を作成するケースは少ないでしょう。

個別注記表

中小企業の個別注記表は、表示区分と中小会計要領の記載に注意が必要です。

表示区分

個別注記表は、会社の機関設計などによって、表示する事項が異なります。
具体的には、会計監査人設置会社であるか、公開会社であるかで異なります(会社計算規則98条)。

会計監査人設置会社は、すべての注記が必要になります。
一方、設置していない会社は、公開会社か否かで、必要な注記が異なります。

以下、会計監査人を設置していない会社の表示区分を記載します。

【注記の表示区分】

No.注記公開会社非公開会社
1継続企業の前提に関する注記
2重要な会計方針に係る事項に関する注記
3会計方針の変更に関する注記
4表示方法の変更に関する注記
4-2会計上の見積りに関する注記
5会計上の見積りの変更に関する注記
6誤謬の訂正に関する注記
7貸借対照表等に関する注記
8損益計算書に関する注記
9株主資本等変動計算書に関する注記
10税効果会計に関する注記
11リースに関する注記
12金融商品に関する注記
13賃貸等不動産に関する注記
14持分法損益等に関する注記
15関連当事者との取引に関する注記
16一株当たり情報に関する注記
17重要な後発事象に関する注記
18連結配当規制適用会社に関する注記
18-2収益認識に関する注記(*1)
18-2国際最低課税額に対する法人税等に関する注記
19その他の注記

(*1)企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」に基づく会計処理を行う場合に注記が必要となる。

中小企業は、非公開会社の場合がほとんどです。
そのため、実務上は、2つの注記(2、9)を表示することが多いでしょう。

中小会計要領

中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)に拠って計算書類を作成した場合、その旨を個別注記表に記載するのが一般的です。

【個別注記表】

  1. この計算書類は「中小企業の会計に関する基本要領」によって作成しています。

まとめ

今回は、中小企業の決算に必要な書類について見てきました。
税務申告と株主総会では、必要な書類が異なります。
それぞれの書類を把握し、作成漏れがないようにしましょう。