個人事業主の開業費とは?開業費の範囲や仕訳について解説
本記事では、個人事業主の開業費について、開業費となる費用の範囲や仕訳を解説していきます。
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開業費とは?
開業費とは、開業準備のために特別に支出した費用を言います。
所得税法施行令
(繰延資産の範囲)
第七条 法第二条第一項第二十号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
ここでは、開業費の定義にしたがって、下記3つのポイントを解説します。
- 対象者はだれか?
- 事業を開始するまでの間とは?
- 特別に支出する費用とは?
対象者はだれか?
開業費が計上できるのは、以下の所得がある方です。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
例えば、副業で雑所得がある方は、開業費を計上できません。
事業を開始するまでの間とは?
事業を開始するまでの間とは、開業の準備を始めた日から開業日までを言います。
開業の準備を始めた日
実は、開業の準備期間について明確な取り決めはありません。
そのため、理論上は「いつからでも良い」となります。
なお、実務上は、開業日の1年前くらいが妥当なラインとされています。
なぜなら、1年以上前だと、開業準備との関連付けが難しくなるためです。
ただし、開業準備であることが合理的に説明できるのであれば、開業費として計上できます。
開業日
開業日についても、明確な取り決めはありません。
実務上は、開業届に記載した開業日とする場合がほとんどです。
特別に支出する費用とは?
開業費は、開業のために特別に支出する費用が対象となります。
つまり、家賃や水道光熱費などの経常的に支出する費用は対象外です。
しかし、個人事業主の場合、法人よりも開業費の範囲は広いと解釈されています。
そのため、実務上は、経常的に支出する費用も開業費として計上しています。
開業費に含まれない費用
上記の通り、開業費には経常的に支出する費用も含まれるため、ほとんどの費用は開業費として計上できます。
そのため、まずは、開業費に含まれない費用を見ていきます。
- 棚卸資産になる支出
- 固定資産になる支出
棚卸資産になる支出
- 仕入高(棚卸資産)
- 未使用の切手代など(貯蔵品)
固定資産になる支出
- 10万円以上の備品など(固定資産)
- 敷金(差入保証金)
- 礼金(長期前払費用)
開業費の具体例
例えば、下記のような費用が開業費に該当します。
- 事務所の家賃
- 事務所の水道光熱費
- 市場調査などの旅費交通費
- インターネット料金などの通信費
- パンフレットなどの広告宣伝費
- 打合せのための接待交際費
- 名刺などの消耗品費
- その他
開業費の仕訳
開業費の仕訳は、以下のステップで行います。
- 繰延資産として計上する
- 償却費を計上する
1. 繰延資産として計上する
まずは、繰延資産として計上します。
(例)開業準備として、開業費を30万円支出した
借方科目 | 金額 | 貸方金額 | 金額 |
開業費 | 300,000 | 事業主借 | 300,000 |
2. 償却費を計上する
開業費の償却方法には、以下の2つがあります。
- 60か月の均等償却
- 任意償却
任意償却は、「いつでも」「いくらでも」償却できる方法です(開業費の額が限度)。
償却期間に制限はなく、金額はゼロとする(計上しない)ことも可能です。
(例)開業費30万円を60か月の均等償却とした
借方科目 | 金額 | 貸方金額 | 金額 |
開業費償却 | 60,000 | 開業費 | 60,000 |
まとめ
今回は、個人事業主の開業費について、開業費となる費用の範囲や仕訳を見てきました。
個人事業主の場合、開業費に含まれない費用がポイントになるでしょう。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
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