法定実効税率の計算方法(税効果会計)

本記事では、税効果会計で適用する法定実効税率について解説していきます。

この記事を書いた人

髙谷 武司

同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。

会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。

法定実効税率とは?

法定実効税率とは、法人の所得に対して課される法人税等を総合的に考慮した、実質的な税負担率を言います。
単純に税率を足し合わせた「表面税率」とは異なり、事業税が損金算入される影響などを考慮して計算されます。

【参考】表面税率との比較

項目表面税率法定実効税率
計算方法各税率を単純合算事業税の損金算入を考慮
税負担率実際の負担率より高くなる実際の負担率に近い
主な用途税金計算(課税所得ベース)税効果会計

計算方法

税効果会計では、決算日において国会で成立している税法に規定されている税率に基づいて計算することとされています(企業会計基準適用指針第28号 税効果会計に係る会計基準の適用指針第44項~49項)。

令和7年度税制改正において、防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用)が創設されたことから、令和7年3月決算において考慮する必要があります。

以下では、上記を反映した計算方法を見ていきます。

【計算方法】

法定実効税率=(法人税率 ×(1+地方法人税率+防衛特別法人税率+住民税率)+事業税率) / (1+事業税率)

※事業税率=事業税率(標準税率 or 超過税率)+事業税率(標準税率)× 特別法人事業税率

【分子について】

地方法人税率、防衛特別法人税率および住民税率は、課税所得ではなく、法人税額に税率を乗じて計算します。

【分母について】

事業税が損金算入される影響を反映しています。
この調整により、法定実効税率は、表面税率よりも低くなります(実際の税負担率に近くなる)。

具体例(大阪府大阪市)

ここでは、大阪府大阪市の法定実効税率について、以下の区分で計算してみます。

  • 外形標準課税適用法人
  • 外形標準課税不適用法人

※法人税、事業税における軽減税率は考慮しない。

外形標準課税適用法人

【前提】

税金の種類標準税率超過税率
法人税23.20%23.20%
地方法人税10.30%10.30%
防衛特別法人税4.00%4.00%
法人府民税(法人税割)1.00%2.00%
法人市民税(法人税割)6.00%8.20%
事業税(所得割)1.00%1.18%
特別法人事業税260.00%260.00%

【法定実効税率】

  • 令和8年3月31日までに開始する事業年度
    • 標準税率:29.74% ※
    • 超過税率:30.58%
  • 令和8年4月1日以降に開始する事業年度
    • 標準税率:30.64%
    • 超過税率:31.47%

※計算例
(23.20% ×(1+10.30%+1.00%+6.00%)+1.00%+1.00% × 260.00%)/(1+1.00%+1.00% × 260.00%)=29.74%

外形標準課税不適用法人

【前提】

税金の種類標準税率超過税率
法人税23.20%23.20%
地方法人税10.30%10.30%
防衛特別法人税4.00%4.00%
法人府民税(法人税割)1.00%2.00%
法人市民税(法人税割)6.00%8.20%
事業税(所得割)7.00%7.48%
特別法人事業税37.00%37.00%

【法定実効税率】

  • 令和8年3月31日までに開始する事業年度
    • 標準税率:33.58%
    • 超過税率:34.55%
  • 令和8年4月1日以降に開始する事業年度
    • 標準税率:34.43%
    • 超過税率:35.39%

まとめ

今回は、税効果会計で適用する法定実効税率について見てきました。
令和8年4月1日以降に開始する事業年度から、防衛特別法人税も反映する点にご注意ください。