棚卸資産に係る消費税の処理は?
本記事では、棚卸資産に係る消費税の処理について解説していきます。
この記事を書いた人

髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。
基本的な処理
以下、棚卸資産に係る消費税の基本的な処理について見ていきます。
計上金額
棚卸資産の計上金額は、採用している経理方式によって変わります。
【計上金額】
経理方式 | 計上金額 |
---|---|
税込み | 税込み |
税抜き | 税抜き ※ |
※税込みで計上することも可能
消費税区分
棚卸資産に係る消費税は、仕入れた時点で、仕入控除税額となります(消費税法第30条)。
そのため、期末の棚卸資産に係る消費税区分は「対象外」となります。
具体例
【前提】
- 当期仕入高:3,000円
- 期末残高:1,000円
- 消費税率:10%
- 経理方式:税抜き
(仕入れ時)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 仕入 | 3,000 | 課税仕入れ |
借方 | 仮払消費税 | 300 | 課税仕入れ |
貸方 | 買掛金 | 3,300 | 対象外 |
(期末)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 商品 | 1,000 | 対象外 |
貸方 | 期末商品棚卸高 | 1,000 | 対象外 |
例外的な処理
下記の場合、棚卸資産に係る課税仕入れ等の税額について、仕入控除税額の調整が必要になります。
No. | 前期 | 当期 |
---|---|---|
1 | 免税事業者 | 課税事業者 |
2 | 課税事業者 | 免税事業者 |
1.免税事業者が課税事業者となった場合
免税事業者が課税事業者となった場合、免税事業者として仕入れた棚卸資産は、課税事業者となった課税期間の仕入控除税額の計算に含みます(消法36、消令54)。
具体例
【前提】
- 期末残高:1,000円
- 消費税率:10%
- 経理方式:税抜き
(期末)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 商品 | 1,100 | - |
貸方 | 期末商品棚卸高 | 1,100 | - |
(翌期首)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 期首商品棚卸高 | 1,000 | 課税仕入れ |
借方 | 仮払消費税 | 100 | 課税仕入れ |
貸方 | 商品 | 1,100 | 対象外 |
2.課税事業者が免税事業者になった場合
課税事業者が免税事業者となった場合、課税事業者として仕入れた棚卸資産は、その課税期間の仕入控除税額の計算に含みません(消法36-5)。
具体例
【前提】
No.1 と同様
(期末)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 商品 | 1,100 | 対象外 |
貸方 | 期末商品棚卸高 | 1,000 | 課税仕入れ |
貸方 | 仮払消費税 | 100 | 課税仕入れ |
(翌期首)
貸借 | 勘定科目 | 金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
借方 | 期首商品棚卸高 | 1,100 | - |
貸方 | 商品 | 1,100 | - |
まとめ
今回は、棚卸資産に係る消費税の処理について見てきました。
棚卸資産については、経理方式や納税義務の変動により、消費税の処理が変わります。
意外と誤りやすいので、まずは、基本的な処理から理解していきましょう。