賃借物件に係る内装工事の耐用年数は?
本記事では、賃借物件に係る内装工事の耐用年数について解説していきます。
この記事を書いた人

髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。
内装工事の勘定科目
内装工事をした場合の勘定科目は、建物付属設備に該当するものを除き、すべて建物として計上します。
【内装工事の勘定科目】
- 建物付属設備に該当するもの:建物付属設備
- 上記以外:建物
耐用年数の適用等に関する取扱通達
(建物の内部造作物)
1-2-3 建物の内部に施設された造作については、その造作が建物附属設備に該当する場合を除き、その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても、それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用する。(以下、省略)
例えば、下記の設備が建物付属設備に該当します。
- 電気設備(照明設備を含む)
- 給排水又は衛星設備及びガス設備
- 冷房、暖房、通風又はボイラー設備
- 昇降機設備(エレベーターなど)
- その他
内装工事の耐用年数
内装工事の耐用年数は、自己所有物件と賃借物件で異なります。
自己所有物件の場合
自己所有物件の内装工事は、建物に対する資本的支出となります。
そのため、建物として計上するものはすべて、その工事した建物本体の耐用年数を使用します。
【自己所有物件の耐用年数】
- 建物付属設備:建物付属設備の耐用年数
- 建物:工事した建物本体の耐用年数
例えば、木造の内装工事を行った場合でも、建物本体が鉄筋コンクリート造だった場合は、鉄筋コンクリート造の耐用年数を使用します。
賃借物件の場合
賃借物件の場合、建物本体は所有していないにも関わらず(内装工事のみ)、当該建物の耐用年数を使用するのは、適当ではありません。
そのため、賃借物件の内装工事のうち、建物の耐用年数は、合理的に見積もった耐用年数もしくは賃借期間を使用します(耐通1-1-3)。
【賃借物件の耐用年数】
- 建物付属設備:建物付属設備の耐用年数
- 建物:合理的に見積もった耐用年数 or 賃借期間
合理的に見積もった耐用年数
合理的に見積もる場合、以下2点に留意が必要です。
【見積もり上の留意点】
- 建物本体の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案する
- その全てを一の資産として償却をするため、その造作全部を総合して見積る
実務上は、内装工事の内訳ごとに耐用年数を見積り、それを加重平均した耐用年数を使用するのが通例です。
なお、賃借物件の内装工事であれば、概ね15年前後が一般的と言えるでしょう。
(具体例)
内装工事 | 金額 | 耐用年数 | 償却費(年) |
---|---|---|---|
ショーウインドウ | 2,000,000 | 16年 | 90,909 |
その他(木造) | 5,000,000 | 22年 | 312,500 |
合計 | 7,000,000 | 403,409 |
上表より、7,000,000 / 403,409 = 17.352...
よって、内装工事の耐用年数は、17年となります。
賃借期間
下記2点の要件を満たせば、賃借期間を耐用年数とすることができます。
【賃借期間にする要件】
- 賃借期間の定めがある(賃借期間の更新のできないものに限る)
- 有益費の請求又は買取請求をすることができない
通常、賃借期間の更新は可能なため、実務で使用することは少ないでしょう。
まとめ
今回は、賃借物件に係る内装工事の耐用年数について見てきました。
建物部分について、自己所有物件とは異なるため、ご注意ください。