青色事業専従者給与 | 配偶者やその他の親族への給与は経費になる?
配偶者やその他の親族への給与は、必要経費にできるのでしょうか?
本記事では、青色事業専従者給与について、その要件や注意点を解説していきます。
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配偶者やその他の親族への給与の取り扱い
配偶者やその他の親族への給与は、原則として、必要経費にできません(所得税法第56条)。
しかし、一定の要件を満たせば、特例として、必要経費とすることができます(所得税法第57条)。
なお、青色申告と白色申告で、特例の内容が異なります。
(配偶者やその他の親族への給与の取り扱い)
区分 | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
原則 | 必要経費にできない | 必要経費にできない |
特例 | 青色事業専従者給与 | 事業専従者控除 |
ここからは、青色事業専従者給与について、解説していきます。
青色事業専従者給与の要件
青色事業専従者給与として認められる要件は、下記のとおりです。
(青色事業専従者給与として認められる要件)
- 青色事業専従者に支払われた給与である
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している
- 届出書に記載されている方法および金額の範囲内で支払われたものである
- 給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額である
青色事業専従者に支払われた給与である
青色事業専従者とは、以下の要件を満たす人を言います。
(青色事業専従者の要件)
- 青色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族である
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上である
- その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事している
ここでは、3つ目の要件を解説していきます。
「6か月を超える期間」とありますが、以下のような場合は、従事できる期間の2分の1を超える期間となります(所得税法施行令第165条第1項)。
- 当該事業が年の中途における開業、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由により、その年中を通じて営まれなかった
- 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由により、その年中を通じて、その居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかった
また、以下の場合は「専ら従事している」とは言えません(所得税法施行令第165条第2項)。
- 学生である者(夜間学生である者を除く)
- 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者、その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く)
- 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者
要するに、本業として事業に従事しているか(できるか)が問われています。
「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している
提出期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。
ただし、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内となります。
また、専従者が増える場合や、給与を増額する場合など、届出の内容を変更するためには、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく提出する必要があります。
届出書に記載されている方法および金額の範囲内で支払われたものである
届出書には、給料などの支給期や金額を記載します。
例えば、支給期について、毎月20日と記載しているなら、毎月支払う必要があります。
なお、記載されている金額の範囲内であれば、給料が変動しても問題ありません。
給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額である
「労務の対価として相当である」とは、以下の状況から判定します(所得税法施行令第164条)。
- 青色事業専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度
- その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況
- その事業の種類及び規模並びにその収益の状況
要するに、世間相場から大きく乖離していないかが問われています。
なお、過大とされる部分は、必要経費とはなりません。
確定申告の注意点
青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
つまり、配偶者(特別)控除や扶養控除の対象外となります。
まとめ
今回は、青色事業専従者給与について、その要件や注意点を見てきました。
とりわけ、青色事業専従者であること、給与の額が妥当であることがポイントとなります。
これらのポイントに注意して、配偶者やその他の親族への給与を必要経費としてください。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
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