資産を非業務用から業務用へ転用した場合の減価償却 | 中古資産の場合も解説
例えば、自家用車(非業務用)を事業用へ転用した場合、減価償却はどのように計算するのでしょうか?
本記事では、資産を非業務用から業務用へ転用した場合の減価償却について解説していきます。
計算の流れ
まずは、転用時点の未償却残高相当額を計算します。
その後、事業用資産として減価償却を行います。
(計算の流れ)
- 転用時点の未償却残高相当額を計算する
- 事業用資産として減価償却を行う
転用時点の未償却残高相当額を計算する
転用時点の未償却残高相当額は、以下のように計算します。
まずは、非業務用資産として使用した期間における減価の額を計算します。
そして、取得価額から減価の額を差し引いて、未償却残高相当額を算出します。
(転用時点の未償却残高相当額)
- 減価の額=取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
- 未償却残高相当額=取得価額ー減価の額
減価の額
減価の額とは、非業務用資産として使用していた期間の減価償却費に該当します。
減価の額の計算式は、以下の通りです。
(減価の額の計算式)
減価の額=取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
非業務用資産の償却方法は、旧定額法となります。
そのため、取得価額に0.9を乗じます。
償却率は、法定耐用年数に1.5を乗じた年数を使用します(1年未満の端数は切り捨て)。
例えば、法定耐用年数が4年の場合、6年(=4年 × 1.5)の償却率を使用します。
なお、中古で取得している場合でも、法定耐用年数を使用します(中古資産の耐用年数ではない)。
経過年数は、6か月以上は切り上げ、6か月未満は切り捨てます。
償却限度額は、取得価額の95%となります。
5年均等償却(所得税法施行令第134条第2項)の適用はありません。
(減価の額の計算方法)
- 償却方法:旧定額法
- 償却率:法定耐用年数に1.5を乗じた年数
- 償却限度額:取得価額の95%
事業用資産として減価償却を行う
転用時点の未償却残高相当額をその資産の未償却残高として、減価償却を行います。
償却方法
法定償却方法は、以下の通りです。
(届出をすれば、定率法等で計算することも可能です)
取得年月日 | 法定償却方法 |
---|---|
平成19年3月31日以前 | 旧定額法 |
平成19年4月1日以後 | 定額法 |
なお、事業用資産の場合は、5年均等償却が可能となります。
(計算式)
- 旧定額法:取得額 × 0.9 × 旧定額法の償却率 × 月数 / 12
- 定額法:取得価額 × 定額法の償却率 × 月数 / 12
- 5年均等償却:(取得価額 ー償却累計額-備忘価額1円)/ 5年 × 月数 / 12
以下、償却方法に関する留意点となります。
- 取得年月日は、当初取得日で判断する(事業への転用日ではない)。
- 転用前の減価の額が償却限度額(取得価額の95%)に達していた場合、5年均等償却になる。
耐用年数(中古資産)
中古資産の場合、法定耐用年数ではなく、使用可能期間を使用することができます。
取得方法 | 原則 | 容認 |
---|---|---|
新品 | 法定耐用年数 | - |
中古 | 法定耐用年数 | 使用可能期間 |
使用可能期間の見積もりは、通常、簡便法を使用します。
(簡便法による見積り)
1.法定耐用年数の一部を経過した資産
(法定耐用年数-経過年数)+経過件数 × 20 / 100
2.法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数 × 20 / 100
以下、簡便法に関する留意点となります。
- 1年未満の端数は切り捨て、2年未満の場合は2年とする。
- 経過年数は、新築等されてから取得するまでの期間となる(転用時ではない)。
具体例
(前提)
- 資産:木造一戸建て住宅(新築)
- 取得価額:24,000,000円
- 取得日:2020/4/1
- 転用日:2024/5/1
(償却率の算定)
- 法定耐用年数(22年):0.046
- 法定耐用年数 × 1.5(33年):0.031
(経過年数の算定)
- 2020/4/1~2024/5/1:4年(6か月未満切り捨て)
(未償却残高相当額の算定)
- 減価の額:24,000,000円 × 0.9 × 0.031 × 4年=2,678,400円
- 未償却残高相当額:24,000,000円-2,678,400円=21,321,600円
(減価償却費の算定)
- 償却方法:定額法
- 減価償却費:24,000,000円 × 0.046 × 8か月 / 12=736,000円
(未償却残高の算定)
- 未償却残高:21,321,600円-736,000円=20,585,600円
まとめ
今回は、資産を非業務用から業務用へ転用した場合の減価償却について見てきました。
転用時点の未償却残高相当額の算定が、通常の減価償却と大きく異なります。
そのため、この点に注意しながら、転用の処理を行うことが重要です。
この記事を書いた人
髙谷 武司
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。
会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。