法人の創立費・開業費とは?それぞれの違いや仕訳について解説

本記事では、法人の創立費や開業費について、それぞれの違いや仕訳を解説していきます。

創立費、開業費とは?

ここでは、創立費および開業費の定義と具体例を見ていきます。

創立費

創立費とは?

創立費とは、法人を設立するために必要な費用を言います。
なお、「法人を設立するため」なので、設立登記前の費用が対象です。

法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条 法第2条第24号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)

創立費の具体例

例えば、次のような費用が創立費となります。

  • 定款作成のための代行手数料
  • 印鑑証明書の発行手数料
  • 許認可費用
  • 設立登記の印紙代
  • 設立前の社員の給与
  • 登録免許税
  • その他

定款に記載していない設立費用

発起人が支出した設立費用のうち、定款に記載がない費用についても、創立費となります。

法人税基本通達
(定款記載を欠く設立費用)
8-1-1 法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合において、当該費用を当該法人の負担とすべきことがその定款等で定められていないときであっても、当該費用は令第14条第1項第1号《創立費》に規定する「法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」に該当するものとする。

開業費

開業費とは?

開業費とは、法人の設立登記後、開業準備のために特別に支出する費用を言います。

法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条
二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

特別に支出する費用

開業費は、開業準備のために「特別に」支出する費用であるのが条件です。
そのため、事務所の家賃や水道光熱費、従業員の給与など、経常的に支出する費用は対象外となります。

費用の種類会計処理
特別に支出する費用開業費
経常的に支出する費用経費

開業費の具体例

例えば、次のような費用が開業費となります。

  • 名刺や印鑑の作成費用
  • 調査のための旅費交通費
  • 会社案内の作成費用
  • 打ち合わせのための接待交際費
  • その他

法人設立前のその他の費用は?

その他の費用の取り扱い

法人の設立前(設立期間中)は、創立費以外にも様々な費用が発生します。
では、これらの費用はどうなるのでしょうか?

結論:設立初年度の経費にできます

法人税基本通達
(法人の設立期間中の損益の帰属)
2-6-2 法人の設立期間中に当該設立中の法人について生じた損益は、当該法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の損益又は当該法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合における当該事業から生じた損益については、この限りでない。

ただし、以下2つの条件があります。

  • 設立期間が長期でない
  • 法人成りでない

設立期間が長期でない

その他の費用の取り扱いは、設立期間が短いことを前提としています。
そのため、法人の設立に通常要する期間を超えた場合は、経費として計上できません。

なお、通常要する期間とは、一般的に、1ヶ月から長くても3ヶ月程度と考えられています。

法人成りでない

法人成りの場合、創立費は設立中の法人に帰属しますが、その他の費用については、個人事業主に帰属します。

(設立前の費用の帰属先)

費用の種類法人成り左記以外
創立費法人法人
その他の費用個人事業主法人

創立費、開業費の処理方法

創立費および開業費の処理方法は、会計基準と法人税法で異なります。

区分原則容認
会計基準営業外費用繰延資産
法人税法繰延資産N/A

会計基準の取り扱い

会計基準では、原則として、支出時に営業外費用として処理します。

ただし、繰延資産に計上し、5年以内で定額法により償却することも認められます。

法人税法の取り扱い

法人税法では、繰延資産として計上し、償却することになります。

なお、償却方法には、以下の2つがあります。

  • 60か月の均等償却
  • 任意償却

任意償却は、「いつでも」「いくらでも」償却できる方法です。
償却期間に制限はなく、金額はゼロとする(計上しない)ことも可能です。

創立費、開業費の仕訳

ここでは、会計基準および法人税法における原則的な取り扱いについて見ていきます。

会計基準上の仕訳

(例)創立費100万円を支出した

借方科目金額貸方科目金額
営業外費用1,000,000普通預金1,000,000

法人税法上の仕訳

(例)開業費50万円を支出した

1. 繰延資産に計上

借方科目金額貸方科目金額
開業費500,000普通預金500,000

2. 60か月で均等償却

借方科目金額貸方科目金額
開業費償却100,000開業費100,000

まとめ

今回は、法人の創立費や開業費について、それぞれの違いや仕訳を見てきました。
とりわけ、発生した費用の区分がポイントになるでしょう。

この記事を書いた人

髙谷 武司

同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツやハウス食品株式会社、IPO準備企業などを経て、2021年に髙谷公認会計士・税理士事務所を開設しました。

会計や税務はもちろん、経営の相談までできる会計事務所として、皆様のサポートをしております。